多摩センター駅前相続相談室
あべ司法書士事務所
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ある人が亡くなる前に、その人の財産について、民法で定められた「相続の放棄」をすることができるでしょうか?
答えは、「できない」です
民法における「相続放棄」は、あくまで亡くなった方からの相続について、家庭裁判所で手続きをすることで放棄ができるという制度です
では、こんなケースを考えてみましょう
〔設例〕
①Xは妻に先立たれており、A・Bという二人の子がいる
②Xの資産は、事業用の不動産を中心として総額8,000万円程度
③Xは、家業を継ぐAに全財産を相続させたいと思っており、その代わりに、Bには住宅購入用資金として1,000万円を生前に贈与しようと考え、AとBにその旨を伝えた
④Bは、「そういうことなら、Xが亡くなったときには、自分は相続を放棄する」と言っている
⑤Xは、Bに1,000万円を贈与をするとともに、念のため、Bに「Xからの相続を放棄する」旨の念書を書いてもらった
⑥その後、Xは遺言書を作ることなく死亡してしまった
⑦Aは、Xの生前の意思を実現すべく、「Aが全財産を相続する」旨の遺産分割協議書にBの押印を求めたが、Bは「気が変わった よく考えてみるとあの話はおかしい」などと言って押印しようとしない
⑧Aは、やむをえず、家庭裁判所で遺産分割の調停を行うこととし、調停の席上でBの念書を示して全財産の相続を求めたが、Bはこれに応じず、結局調停は成立することなく審判の手続きに移行した
⑨家庭裁判所において、Bの念書を理由として、Aが全財産を相続する旨の遺産分割の審判がなされるか?
答えは、お分かりのとおり、「なされない」です
Xの生前に作られた、「Xの相続を放棄する」というBの念書は、その後にBの気が変わってしまえば、もはや何の意味も持たないと言ってよいでしょう
では、Xが、生前に、「Aに全財産を相続させる」という遺言書を作っていたらどうでしょうか?
たしかに、遺言書があれば、AとBによる遺産分割協議は不要となります(原則として遺言書のとおり相続することになります)
ただし、ここで問題になってくるのが、Bの「遺留分」です
民法は、遺言によっても奪うことができない相続人の権利を定めており、これを「遺留分」と言います
設例のケースでは、Bは、Xの遺言によって、自身の遺留分を侵害されたこととなり、この侵害相当分について、Aに対して取り戻しを請求することができます(この請求を、「遺留分減殺請求(いりゅうぶんげんさいせいきゅう)」と言います)
従って、Bが遺留分減殺請求をすれば、Xの遺言の内容は完全には実現されない、ということになります
(遺留分の減殺請求をするかどうかはB次第ですから、Bが何も行動を起こさなければ遺言の内容どおり無事おさまった、ということになります)
では、Xの死後におけるBからの遺留分減殺請求を避けるための手段はないのでしょうか?
ここで民法第1043条第1項を見てみましょう
「相続の開始前における遺留分の放棄は、家庭裁判所の許可を受けたときに限り、その効力を生ずる。」
遺留分は、家庭裁判所の許可を得れば、相続の開始前(生前)に放棄ができるのです
したがって、Xの意思である「Aに全財産を相続させる」を実現するためには、Xの生前に、
①Xが「Aに全財産を相続させる」旨の遺言書を作る
とともに、
②Bが家庭裁判所に申し立てをして遺留分放棄の許可を受ける
という2つの手続きをしておけば良い、ということになります
(ただし、この遺留分放棄の許可については、その後の事情の変化により、放棄者から申し立てることで、取り消しの審判ができると解されています もっとも、単に「気が変わった」という理由で許可の取り消しがなされることはないでしょうから、Bとしては慎重に決断する必要があります)
なお、遺留分の放棄の許可を得ても、相続人としての地位を失ったわけではありません 従って、借金などのマイナスの財産を放棄したことにはなりませんし、遺産分割協議をする場合は遺留分放棄者も参加する必要があります その点についてはご注意ください
子Bが、存命中の父Xのプラスの財産を、相続によって引き継ぐことをあらかじめ放棄する(受けとらないことを事前に決めてしまう)、という効果を得ようとするなら、
「Xが遺言書を作る+Bが家庭裁判所で遺留分の放棄の許可を受ける」
という方法が考えられる、ということになります
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